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雨が、降っていた。
僕はアカデミーの校舎の外で俯いていた。
雨のせいで制服や髪が肌に張り付き気持ちが悪いとは思ったが、ここから動きたいとは思わなかった
。いつも一緒の姉とは離れていた。喧嘩をした、というわけではない。少し一人になりたいと思ったのだ。
一人になりたいと思ってたどり着いたのがたまたまここで、たまたま雨が降っていた。それだけだ。アカデミーの成績が悪かった訳ではない。人間関係だっていたって良好だ。けれど、どうしても心にモヤモヤとしたものがあった。そうゆうときは、姉に相談するのもいいが、一人で考えるのも有りだ。
どれくらいそうしていただろうか、全身あますところなくびしょ濡れになっていたのだから短い時間ではなかったのだろう。聞きなれた声が自分の名を呼ぶのが聞こえる。
姉が大慌てで僕のもとまでやってきた。
部屋で待ってるね。と言っていた姉がどうしてここにいるのだろうか。そういえば少し前にアロエとカイルの二人が自分に声を掛けてきたような気がする。そうか、あの二人が姉に僕の状況を伝えたのか。
「ユウ君、ユウ君。なにやってるの!風邪ひくよ!」
姉が自分の肩に手を添えるのがわかった。しかし、雨はその姉の体を通り抜けていく。そのことが辛くあり、苦しくあり、また少しだけ嬉しくもあった。
(あぁ、良かった。お姉ちゃんは雨に濡れて寒い思いをしたりしない)
「ユウ君?」
「なんでもないよ、お姉ちゃん」
顔をあげて笑って見せると、僕の肩に手を当て顔を覗き込むような状態の姉と目が合った。姉は怪訝そうな表情をしていたけれど、僕がずっと笑顔のままなので納得したのか諦めたのか、とにかく一緒に笑ってくれた。
「ユウ君濡れちゃったね。寒くない?」
姉はなにも聞かなかった。どうして雨の中あんなところにいたのか、何か悩みでもあるのか、きっと色んなことを考えただろうけれど何も言わないでくれた。
「大丈夫だよ」
だから、僕も何も言わなかった。
「でも、やっぱり冷えてるわ。寮に帰ったらお風呂ね」
そう言って姉は僕の両頬に手を添えた。質量を持たない姉から触れられても感触など無いはずなのに、なぜかハッキリと「触れられている」という感じがした。
「お姉ちゃん・・・あったかいや」
ぽろりと零れた僕の言葉に姉は心底驚いたという顔をしたが、すぐににこりと笑った。
その笑顔は姉が生きていた時と寸分違わぬものだった。
雨は相変わらず降り続いていたし、僕の体から熱を奪っていた。
「ユウ君の、うそつき」
僕は笑ったままだった。姉も笑ったままだった。
姉の体を通り抜けていく雨粒たち。僕の体を濡らす雨粒たち。
顔に伝う雨の雫は、もしかしたら泣いているように見えなくもないのかもしれない。







ユウとサツキはカップリングというより家族愛がいいですね。お互いがお互いを大事にしてるような。
あと、サツキはユウをユウ君って呼んでたら萌。
2007 3 9